青土

建築のはなし

2015年01月

松前町立 松前中学校

過疎化が進む松前町では学校統合が進み、最後の2つの中学校を1つに統合改築することになりました。敷地は津軽海峡を望む小高い丘の上。海峡の向こうには竜飛岬が間近に見えます。松前町には古くから松前杉の町有林が豊富にありましたが、産業としての林業はすでに終了しせっかくの杉も使われることがなくなっていました。しかし、新校舎は地元の松前杉を使って建てたいという、多くの地元の人々の思いを受けて、私たちはその任務に挑戦しました。

北海道でも最大規模の木造建築です。大きな空間を作るために、最近では、大断面の集成材を使った工法が採用されることが多く見られました。大断面工法だと施工業者は、少数の大企業に限定されてしまいます。そこで私たちは、在来工法での実現を目指しました。これにより地元の工務店の大工たちが仕事に参加できるようになり、地元の木材で、地元の職人が作るというプロセスが実現できました。公共建築を作ることが、地元の施工業者にとっては、大きな誇りとなり、同時に地域に対する経済効果も高いものとなりました。

建物のデザインには、北海道の開拓初期からの農業用の大型木造建築に使われた形態を取り入れ新しくも、どこか懐かしい風景を目指しました。町の人の思い、建築のデザイン、新しい時代への希望などが評価されて平成29年度の「北海道赤レンガ建築賞最優秀賞」を受賞しました。

またこの作品は、私自身の象設計集団代表としての最後のキャリアとなり、プロジェクトの途中で「青土」をスタートしたので、青土としての最初の作品になりました。思い出の多い建築となりました。

建築データ

松前町立 松前中学校

所在地 松前町  竣工年月 2015年01月

構造規模 木造平屋建て 5164.78㎡

公開プロポーザルコンペ 最優秀賞北海道赤レンガ建築賞最優秀賞       設計協力 <意匠>伊勢真樹建築設計事務所 <構造>ホルツストラ(稲山、蒲池) <設備>阿部設備設計事務所(鳴海、森)、環境設備計画(長澤、北村)